小説【Schwarz Schneide

哀れなる魂たちの幻想曲 4



「それで、気がついたらもう夜明けが近づいてたのよ。何だか長い夜だったわね」
 話し終えた頃には、手もとの椀に入ったスープはすっかり冷めてしまっていた。それをスプーンで掬い取り、上品に口に運んで喉を潤す。そんなラクウェルの仕草を見て、他の皆も食事の手がいつの間にか止まっている事に気づく。レヴリスがちょっと考えて言った。
「しかし、夜中にそれほどの大きな光なんて、僕も気づきませんでしたよ。エフィさん気づきました?」
「いや、私も気づかなかったな。…お前が気づかなかったのは、熟睡してたからじゃないのか?」
「…そうでした」
 照れ隠しにうつむくレヴリス。そんな二人を見て、ミステールとミリアが顔を見合わせて笑った。
「行き場の失った魂は、いつかは天に導かれるべきもの。ラクウェルの行動は正しいものだな」
「その通りですね。魂たちが神の御許にて、永遠の安らぎを得られますように」
 目を閉じ、胸元の十字架に手を置いてミステールは祈りを捧げた。ミリアも、ミステールとは違う独特な印を組んだ。
「…来たな」
 沈黙を破って、エフィが身を硬くした。
「あっ、敵さんですね。さて、準備準備…と」
 祈りを終えて、あたふたとミステールが杖を手に立ち上がる。その後ろから、ラクウェルの放った火弾が飛ぶ。それを合図に、草むらから数匹のモンスターが飛び出した。

 戦いは長引いた。ラクウェルが魔法で敵の体力を削り、エフィとミリアが武器で確実に仕留める。その間、レヴリスは後方から補助魔法でサポートし、ミステールは傷ついた仲間を白魔法で癒す。戦闘のバランスはとれているが、5人の体力は限界に近い。ミリアが息を切らして言う。
「これほど叩いても倒れないとは…!」
「MPが切れてきました…」
 ふらつくミステールを、一歩下がったエフィがそっと支える。
「大丈夫か?下がっていろ。…レヴリス、来い!」
「あ、はい。僕が壁になります」
 魔力で作った鎖状の武器を構えて、レヴリスが前に出る。しかし、その足も微妙におぼつかない。
「仕方ない、あれを使うわ」
 ラクウェルが魔法の詠唱を始めた。
「大地に宿りし頑強たる魂よ、我が下に無数の力となりて来れ…"スーピィー君、たくさん〜"」
 突然地響きがして、大地から無数の小さな生き物があらわれ始めた。なんだかとぼけた顔の、ぬいぐるみのような緑色の生き物で、背中には小さな羽根が生えている。
「なんですか?このZM(ずんぐりむっくり)な生き物は!」
 驚くレヴリスに、ラクウェルは微笑んで言う。
「スーピィー君っていう精霊よ。浄化の時に魔道書の欠片から生まれたものを、私がもらったの」
 その不思議な生き物は次第にモンスターにくっついて終結し、モンスターの姿が緑色に埋め尽くされていく。
「はい、終わり」
 ラクウェルがパンと手を叩くと、スーピィー君と共に、モンスターの姿もなくなっていた。
「便利な子でしょう?でも、精霊さんだからあんまり多く使えないのよ。まぁ、お洗濯を手伝うぐらいなら使っても良いかもしれないわね」
 その後、街道に再び静寂が訪れた。戦闘を重ねる事で互いの新たなる力を見出して、5人の冒険は更に続く。