小説【Schwarz Schneide

出会い 2



 先ほどまで人だかりができていたエルヘブンの大通りが、ようやく静かになってきた。道端にまだ転がっている部品を拾い集めると、ちょっとした金属の山ができた。レヴリスはその部品一つ一つを見定め、女の子から大体の形を聞くと、大きめの金属板を組み始めた。
「えっと…これがここにくっついて…」
 みるみるうちに、細かかった部品が一つの大きな機械になっていく。傍で見ていた女の子の目が大きく見開いた。
「うわぁ…すごい」
「僕、もともとこういう細かい作業が大好きなんですよ。この世界では鍛冶職人としてやって行こうと思ってますし。まぁ、武器作りは妹から教わったんですけどね。」
 妹…ソアは元気にしているだろうか…。
「ところで、お兄ちゃんの羽、大きくてかっこいいね〜」
 その女の子の突然の歓声に、思わず手を止める。そういえば、倒れた時に介抱してくれたおじさんも、白魔術師の子も、自分の羽根の事には触れなかった。今まで自分に羽根があって、それが周囲を怖がらせているかもしれないと思っていたことは、すっかり忘れていた。
「怖いとか、気持ち悪いとかおもわないんですか?この角なんかも」
「当然でしょ。お兄ちゃんみたいな人、この街にはいっぱいいるよ。あたしのパーティーの人なんか、尻尾のある男の人とか、全身が機械でできてる人とかいるんだよ!お兄ちゃんの羽根ぐらいなら誰も何とも思わないって」
 やっぱり、この世界に来て正解だったかも。レヴリスはそっと笑った。
 
「鍛冶職人かぁ…。うん、お兄ちゃんならきっとできるよ!」
「そう…ですかね。まだ、ちゃんとした武器とか作った事ないんですけど…。よし、完成!」
 座席に取りつけたレバーを引くと、車は大きな音を鳴らした。女の子は大喜びで車に乗りこみ、細かい所をチェックする様にあたりを見まわした。
「本当に直っちゃった…ありがとう。ごめんね、あたしが暴走しちゃったから…」
「いや、いいんですよ。元気のいい機械兵さんですね」
「えへへ…またどっかで会えたらいいね」
「そうですね。いい冒険を!」
 勢いよく走り出した車を見送って、レヴリスはまた歩き出そうとした。日はもう傾き出しているが、夜が来る前に行かなければならない所がある。冒険者ギルドから紹介された出会いの酒場で、この場所で前もってギルドを通じて約束しておいたパーティーメンバーと初めて顔を合わせる事になっている。
「さて、『水飼亭』は…」
「先ほどは、大変でしたね」
 振り向くと、修道女らしい少女が立っている。近くで一分始終を見ていたようだ。しかし、その少女が何者か思い出せない。
「えーと…?」
「私の白魔術、お役に立ててよかったです」
 その言葉を聞いて、思い出した。赤い石のついた短い杖を持った、白い法衣の少女。さっき、白魔術で介抱してくれた子だ。
「あ、さっきはすいません、お礼の一つも言ってなかったですね」
「あなた、レヴリス・イーズさんでしょう?」
 少女は腰につけたポーチから紙切れを取り出して、広げた。そこには、『紹介状』と書いてある。レヴリスが冒険者ギルドでもらったものと同じものだ。
「ギルドのマスターから、これから仲間になる方々の特徴を教えていただいたんです。もう3人見つけましたから、あと1人探していました。レヴリスさんが私達を探すよりも、私達がレヴリスさんを探す方が早いですから。…長身に長い銀髪。尖った角に2対の金色の翼。特徴がありすぎる方ですね」
「あ…」
 可愛らしい微笑をたたえる少女に、レヴリスも安心して笑顔を向ける。これからずっとパーティーメンバーとして付き合っていくなら、第一印象は重要だと教わった事がある。
「はい、僕はレヴリス・イーズ。精神系鍛冶職人です。まだ職人としては未熟ですが、よろしく」
「私はミステール・エンブロイティアです。ミステールと呼んでください。くわしい自己紹介は後で。今は『水飼亭』に行きましょう、皆さんが待っていますから」

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